禁煙週間:タバコと心臓病について

2024年06月04日

5月31日はWHOの定めた世界禁煙デーであり、厚生労働省は毎年5月31日から6月6日までを『禁煙週間』と定めています。

診療のさなか、タバコを吸っていると心臓の専門医にはなれないのですよ、とお話しすると驚かれることもしばしばあります。(日本循環器学会認定循環器専門医制度規則第4条に受験資格として、自ら禁煙し且つ禁煙の啓発に努めること、と定められています)

日本人においては過去にJPHC研究というコホート研究において、心臓病にかかった事がない約40000人の男女を11年間追跡すると、たばこを吸わない方に比べて、たばこを吸っている方では男女ともに虚血性心疾患リスクが約3倍(心筋梗塞では4倍)高くなることが分かりました。反対に、禁煙してから2年以内に禁煙の効果が出る事も報告され、禁煙する事で血液が固まりやすくなる、血管が収縮しやすくなるといった喫煙の影響がなくなり、血栓(血液の塊)ができにくくなるためと考えられます。

私は過去に狭心症における動脈硬化の『質』について、カテーテル手術中に用いる特殊な超音波機器を用いて総合病院・大学などにおいて研究をしておりまして、喫煙のリスクについても過去に研究成果を論文にまとめて発表も致しました。(Impact of cigarette smoking on coronary plaque composition. S.Kumagai著 Coron Artery Dis. 2015 Jan;26(1):60-5.)

IB-IVUSという特殊な解析ソフトを用いて冠動脈の動脈硬化の『質』をみています。動脈硬化の質は色分けされ、青色が多いほど質が悪く心筋梗塞などの大きな心臓事故が多くなるといわれています。(a)はタバコを吸っていないけれど狭心症になり手術を受けた方、(c)はタバコを吸っておられて狭心症になり手術を受けた方の画像です。同じように狭い血管であってもそれぞれの画像内一番右のカラーの画像において、タバコを吸っておられる方はより青色が多いことがわかるかと思います。同じように狭い血管でもその動脈硬化の質には差があり、またこの差が将来的な予後に影響があることも証明されています。

これは左からタバコを吸っていない人、禁煙した人、今も吸っている人の青い動脈硬化の比率を比較した図になります。タバコを吸っていない人が最も少ないのですが、禁煙すれば改善が得られることを示唆するデータかと考えています。

禁煙週間はもう終わろうとしていますが、自身の健康のため、周囲の方の健康のため、今一度禁煙について考えて頂く機会となりましたら幸いです。

タバコを吸っておられる方もそうでない方も、胸が痛い、締め付けられる、違和感がある。運動をしていると息切れがする。動脈硬化リスクを持っている。狭心症や心筋梗塞の家族歴がある、など、心臓のご不安がありましたらいつでもご相談ください。スタッフ一同お待ちしております。

投稿者:副院長 熊谷 宗一郎